CRE CASE STUDYCREソリューションの実例

ものづくりのまちに “シェア型施設”
技術やアイデアを掛け合わせ価値創造へ

いつの時代も、世の中は新しいことへの挑戦を通じてより豊かに進化してきた。さまざまな分野で事業を行うMCグループの仲間もまた、その一端を担っている。

「ものづくりのまち」として知られる東京・大田区に8月末、製造業や研究開発企業、スタートアップが入居するシェア型産業創出・支援施設「innoba(イノーバ)大田」が竣工した。三菱商事都市開発が立ち上げた新ブランドの第1弾で、入居企業同士のコラボレーションを促す施策などによってイノベーションを創出、地域における産業振興のハブとなることを目指している。

三菱商事都市開発が挑む新ブランド民設民営のインキュベーション施設

「地域の産業振興に資する新ブランドの第1弾を、ものづくりのまち・大田区で開業できることは大変光栄」――。9月5日に開催された大田区との地域産業活性化などに関する連携協定締結式に出席した三菱商事都市開発社長の田村 将仁はそう力強く語った。

同社の新ブランド「innoba」のコンセプトは、製造や研究開発をはじめとする多様な業種・業態が一つの施設に集まり、共用スペースの利用やイベントの開催などによってコラボレーションを促進、入居企業の事業強化・拡大につなげる、というもの。いわゆるインキュベーション施設ではあるが、一般的には自治体や大学による運営であったり助成金ありきのものであったりする一方、innobaは全国的にも珍しい「民設民営」の施設という点で注目されている。
同社はどのような経緯で新ブランドを開発し、どこに勝機を見出していこうとしているのか。開発と運営の両面から探ってみたい。

大田区との連携協定締結式にて。

町工場だけではないマルチテナントという選択

物語の始まりは約2年半前、MCグループ企業が所有していた土地を買い取ったことに遡る。
場所は、多摩川河口域で住宅と町工場が混在する大田区仲六郷。マンションがいいのか、その他のアセットがいいのか――。検討を重ねる中で、同社が着目したのが大田区という地域の特異性だった。町工場が中心となって開発した「下町ボブスレー」、町工場の奮闘を描いた小説『下町ロケット』等々、「ものづくりのまち」として知られる同区は実際に、東京都内で製造業の事業者数が最も多く、中でも機械金属加工が盛んな地域だ。

開発推進第一部マネジャーの工藤 歩は、「いろいろと調べていくうちにわかってきたことは、区内の町工場がそれぞれ得意な工程を小ロット・短期間で請け負い、協業を図っているということでした。これは例えば、すぐにプロトタイプを作成したいと考えるスタートアップとの相性もいいし、スタートアップならではのアイデアが化学反応を生む可能性もある。そうした観点から、町工場をはじめとした製造業だけでなく、研究開発企業やスタートアップも入居するマルチテナント型の施設にニーズがあるのではないかと仮説を立てました」と振り返る。

この仮説をいかに検証していくか。物流・商業アセットを中心に手掛けてきた同社として初めての取り組みであることに加え、前述の通り民間企業による先行事例がほぼない中で、工藤らは、入居が想定される製造業や、インキュベーション施設運営者、地方自治体などへのヒアリングに駆け回った。

「専門用語が多く、わからないことだらけ。とにかく必死に調べては学び、参考施設に足を運んでは完成イメージをつかむ日々でした。また次第に、製造業でも工場ではなくショールームとしての利用や、飲食業のテストキッチンとしての利用といった多種多様なニーズがあることもわかってきました。そうして、より広範囲の業種・業態を対象としたシェア型産業創出・支援施設というinnobaのコンセプトが形になっていったのです」

開発・運営のノウハウを積み上げ不動産業界での差別化ブランドに

地上6階・32区画(約61~229㎡)を有するinnoba大田には、10月現在、製造業3社、製造業を顧客とする専門商社1社が入居している。入居に興味関心を持った問い合わせも多く、現在は、施設の価値を高める運営のステージへと移りつつある。その一環で締結したのが大田区との連携協定であり、区内の参加企業が一般に工場見学を開放するイベントへの参加や、区営のインキュベーション施設との連携などに取り組む計画だ。研究開発企業の一大拠点である「かながわサイエンスパーク」との交渉なども進めているという。

こうした運営面の重責を担うのが、運営統括部マネジャーの相良 直哉だ。「私はこれまで物流施設の管理業務に携わってきたので、innobaのような施設の運営は初めての経験。まずは他施設との連携だけでなく、入居企業様とのコミュニケーションを密に、どのような潜在ニーズがあるのか引き出し、それに応えるサービスを展開していくことも大切と考えています。そうして運営ノウハウを積み、次につなげていくことが私の最大の役割。チャレンジングだがやりがいは大きい」と前を向く。

innoba入居企業の成長・発展の仕組み

三菱商事都市開発のinnobaブランドはスタートしたばかりだが、「民設民営」という特徴への注目は高く、公営や助成金に頼らない“ポストインキュベーション施設”の誘致を模索する地方自治体からの問い合わせも多いそうだ。ものづくり以外にも、テック系に強い、ライフサイエンス系に強い、といった地域ごとの産業特性に合わせて、臨機応変に展開できるマルチテナント型のノウハウも活きるだろう。

開発・運営それぞれの立場から、情熱を持って新たなミッションに取り組み、「不動産業界における競合他社との差別化につながるブランドを確立したい」と語る工藤と相良の熱い眼差しから、今後、全国各地にinnobaが広がっていく未来図が見えてきた。

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